○泉州南消防組合放射性物質等に係る火災等の消防活動要綱

令和2年9月23日

泉州南消防組合消防長訓令第15号

(消防活動の対象)

第1条 この訓令は、泉州南消防組合警防規程(平成28年泉州南消防組合消防長訓令第8号。以下「警防規程」という。)第18条その他の警防活動に含まれる以下に示す災害を対象とする。

(1) 放射性同位元素及び核燃料物質(以下「放射性物質等」という。)の輸送時における火災・流出・漏洩等の災害

(2) 放射性物質等(放射線発生装置を含む。)取扱施設における火災・流出・漏洩等の災害

(3) 放射性物質等を意図的に用いた悪意目的による災害若しくは、その疑いのある災害(以下「意図的災害」という。)

(4) 原子力施設における災害

(5) その他、放射性物質等に係る災害

(用語の定義)

第2条 この訓令における用語の定義は、次による。

(1) 被ばくとは、人体が放射線を浴びることをいう。

(2) 汚染とは、放射性物質等が体や衣服に付着したり、体内に取り込まれることをいう。

(3) 密閉消火とは、防火区画等を利用した密閉による窒息消火をいう。

(4) バックグラウンドレベルとは、自然界における天然の放射線量をいう。

(5) 進入統制ラインとは、最上級指揮者が判断した各防護装備を施した隊員のみが活動できる区域と防護装備を施していない隊員が活動できる境界を明確化し、活動隊員の出入りを統制するラインをいう。

(6) ホットゾーンとは、原因物質に直接接触する可能性のある区域をいう。

(7) ウォームゾーンとは、消防活動開始時には原因物質が存在せず、直接的な危険性は少ないが、消防活動が開始され、活動隊員等がホットゾーンから退出することで二次汚染が考えられる潜在的危険区域をいう。

(8) コールドゾーンとは、直接の危害が及ばない安全区域で、汚染の可能性がない区域として管理する必要がある区域をいう。

(9) 一次トリアージとは、除染方法を決定する目的として、傷病の程度、歩行の可否及び原因物質の付着等について、汚染検査前にウォームゾーンで実施するトリアージのことをいう。

(10) 二次トリアージとは、コールドゾーン内で多数の傷病者等に対して救急隊が実施するトリアージのことをいう。

(11) 汚染検査とは、放射性物質等によって汚染された区域又は汚染された可能性のある区域から搬出した傷病者、退出した隊員及び資機材を放射線測定器(汚染検査用)により検査することをいう。

(12) 乾的除染とは、衣服等に付着した放射性物質を除去する目的で行う脱衣のことをいう。

(13) 水的除染とは、体表面や資機材に付着した放射性物質を拭取りや水及び中性洗剤等の除染液を用いた方法で除去することをいう。

(14) 放射線危険区域とは、事業者が放射線の不必要な被ばくを防ぐため、放射線量が一定以上ある場所を明確にし、人の不必要な立入りを防止するために設けられている区域をいう。

(事前対策)

第3条 署長は、警防規程第43条に定める事項について、次に掲げる防火対象物等の実態把握に努めるものとする。

(1) 放射性物質等取扱施設の実態把握

第1条に掲げる災害に関係する施設等の実態をあらかじめ把握しておくとともに、日常から施設関係者との災害時対応体制を確立し、特定対象物警防計画を策定しておく。

(2) 意図的災害の発生する可能性がある消防対象物の把握等

 社会情勢に応じて、重点的警戒が必要とされる消防対象物の把握

 集客施設等、大規模な被害が予想される消防対象物の把握

 重点警戒施設の消防警戒・立入検査時における放射線測定器の携行

2 装備資機材の維持管理

防護装備、測定機器及び除染設備の日常点検を励行し、適切な維持管理を行う。

3 訓練の実施

本訓令に基づき、訓練を実施する。

(覚知時の措置)

第4条 消防指令センターが本訓令の対象とする災害を覚知した場合は、泉州南消防組合災害出動計画に基づき、指令を行うとともに「放射性物質等に係る災害である。」旨を付加し、必要に応じて暫定的に災害地点から半径約120mの位置に部隊の集結場所を指定する。

2 意図的災害が発生した場合は、同時多発災害となる可能性を想定して、複数の災害に対応できるよう考慮する。

3 その他、特殊災害の指令業務に関する事項は、別に定める。

(任務)

第5条 各隊の任務は、次のとおりとする。

(1) 最上級指揮者は、現場指揮本部の長として、各小隊等を指揮統括して円滑な指揮体制を確立する。また、災害規模に応じて、消防指令センターと協力して増隊出動等を行う。

(2) 消防隊は、ウォームゾーンにおいて、一次トリアージ、隊員の除染を含む除染活動及びホットゾーンにおける救助隊の活動補助を行う。なお、2小隊以上での中隊活動となる際は、最上級指揮者が指名した中隊長を長として活動を行うものとする。

(3) 救助隊は、高度救助隊長を長として、ホットゾーン及びウォームゾーンにおいて原因物質の簡易検知、ホットゾーンの設定、負傷者等の救出活動及び消防隊の活動補助を行い、2小隊以上での中隊活動となる際についても、高度救助隊長を長として活動を行うものとする。なお、高度救助隊が他に出動中等で不在となる際は、特別救助隊長を長として活動を行うものとする。

(4) 救急隊は、コールドゾーンにおいて二次トリアージポスト、救急指揮所及び現場救護所を設置し、消防隊等が除染した傷病者を引き継ぎ、傷病者の救命を主眼として観察及び必要な応急処置を実施し、速やかに適応医療機関等に搬送する。なお、2小隊以上での中隊活動となる際は、最上級指揮者が指名した中隊長を長として活動を行うものとする。

(消防活動)

第6条 消防活動は、消防隊員の被ばく及び汚染を防止し、住民の安全を確保しながら原因物質の汚染拡大防止を図り、次により行動することを原則とする。

(1) 被災者を早期に救出及び救護し、放射線による障害の軽減を図る。

(2) 災害の状況から判断し、活動中の被ばくが避けられない場合は、活動隊員の積算被ばく量を予測し、被ばく限度(※)を超えない活動とする。

なお、ホットゾーン及びウォームゾーンで活動する隊員、並びに初動対応を行う消防隊等の隊員は、必ず警報を発する個人被ばく管理用放射線測定器(以下「個人線量計」という。)を装備する。消防警戒区域で活動する隊員についても努めて個人線量計を装備する。

※消防活動における隊員の被ばく限度基準

1 1回の消防活動における被ばく線量限度は、10mSvとする。

2 人命救助のために、やむを得ない場合は、100mSvを限度とすることができる。

3 1年間の積算被ばく線量が50mSvに達した場合は、以降5年間、放射線災害現場で活動させてはならない。

4 積算被ばく線量が100mSvを超えた隊員は、生涯にわたって放射線災害現場で活動させてはならない。

5 女性隊員の活動区域については、母性保護に関する関係法令等を遵守し、活動させなければならない。

(3) 被ばく限度に達した隊員を現場活動から離脱させた後の補充隊員を十分に確保するため、他隊等の応援要請を行う。

(4) 活動方針の決定に当たっては、本訓令が対象とする施設関係者を早期に確保して有効に活用するとともに、(公社)日本アイソトープ協会等の助言を参考とする。

(5) 空調設備を停止する。ただし、空調設備に汚染拡大を防止する構造がある場合及び災害状況から空調設備を作動させる必要がある場合は活用する。

(6) ホットゾーン等の設定を明確に行い、厳重な進入管理と被ばく管理及び汚染防止措置を実施する。

(7) 意図的災害の可能性を示唆する情報を得たときは、直ちに消防指令センターに伝達する。

(8) 消防活動方針は、指揮者を通じて全隊員に周知徹底し、隊員の行動を強く統制する。

(9) 放射性物質等に係る関係機関(別表参照)、大阪府、市町村及び警察機関等と密接に連携し行動する。

(10) 消火活動は、密閉消火等の効果的な消火方法を選定し、延焼防止を重点とする。

(11) 消防指令センターは、最上級指揮者からの現場情報により傷病者の救出及び除染の優先度、汚染検査及び除染結果、消防隊員の活動危険、救急処置等への医学的な助言が必要な場合には、医師等の派遣を要請する。

(12) 大阪府及び医師と連携して、被ばくした傷病者、放射性物質等による汚染を受けた傷病者を受入れ可能な緊急被ばく対応医療機関を確保する。なお、消防活動を実施し、被ばく又は汚染のあった隊員若しくは、そのおそれのある隊員は、施設関係者及び専門家等と協議し、必要に応じて泉州南消防組合職員安全衛生管理規程(平成26年泉州南消防組合消防長訓令第8号)第37条に定める特別健康診断を受けさせるものとする。

2 出動時には、原則として次の措置をする。

(1) 特定対象物警防計画等を携行する。

(2) 出動隊は、放射線測定器、個人線量計、呼吸保護具、防護服、ゴム手袋等必要資機材の積載を確認し出動する。

(3) 放射線測定器積載隊は、出動時から放射線測定器の電源を入れて空間線量率を測定しながら出動する。なお、爆発火災にあっても、放射性物質等に関わる可能性があることから空間線量率を測定しながら出動する。

3 出動隊の集結

(1) 出動途上において、放射線測定器積載隊がバックグラウンドレベルを越える線量率を確認した場合は、次の措置を実施する。

 車両を停止させて、空間線量率がバックグラウンドレベルを超えない安全な位置まで移動し、バックグラウンドレベルを越える線量率を示した位置及びバックグラウンドレベルを超えない安全な位置を消防指令センターへ伝達する。

 出動隊は、消防指令センター若しくは、最上級指揮者から新たに指定された集結場所に直ちに集結する。

 隊員に対し、呼吸保護具の着装、資機材の再点検等、必要な指示を行う。

(2) 集結場所に集結した場合は、次の措置を実施する。

 集結場所の空間線量率がバックグラウンドレベルを超えない事を複数の放射線測定器を用いて確認する。

 隊員に対し、呼吸保護具の着装、資機材の再点検等、必要な指示を行う。

4 災害現場付近到着時における活動内容は、次による。

(1) 出動指令時、放射性物質等関係施設である旨が付加されない場合で、現場到着後、本訓令の対象とする災害と判明した場合は、消防指令センターへ直ちに伝達するとともに、出動各隊へ通報、周知徹底し、風上又は風横側で安全を見込んだ十分な距離をとって部署する。

(2) 現場指揮本部設定場所の風向等を測定し、消防指令センターに伝達する。

(3) 現場指揮本部は、空間線量率が、バックグラウンドレベルを超えない安全な位置で、施設関係者等と連携が取りやすい場所を選定して設置する。

(4) 出動隊は、早期に施設関係者等を確保し、災害実態の把握に努めるとともに、活動方針の決定に関わる技術的支援者として有効に活用する。

(5) 消防警戒区域を早期に設定する。

(6) 災害が発生している施設等への接近に際しては、関係者の助言と誘導に従い、努めて複数の放射線測定器による継続的な空間線量率の測定を実施し、慎重に接近する。

(7) ホットゾーン及びウォームゾーンが設定されるまでの間において、身体防護をしていない消防隊員の出入りを統制することによる被ばく防止、汚染防止及び汚染拡大防止を目的とした進入統制ラインを設定する。

(8) 進入統制ラインは、放射線(空間線量率)の測定値がバックグラウンドレベルを超えた場所及び情報等により、汚染検査の対象となる避難者の集合場所や除染所の設定を考慮した位置に設定する。

(9) 災害現場における広報は、各関係機関とともに警防規程第26条に基づき、軽易な事項を除き、最上級指揮者の指示により統一的に実施する。

(10) 災害現場における資機材等の支援活動については、最上級指揮者の指示により実施する。

5 放射線測定

(1) 放射線(空間線量率)の測定は、努めて測定に専従する隊員により実施する。

(2) 放射線の測定は、努めて複数の放射線測定器を用いて実施するものとし、測定結果は様式1「放射線測定記録表」に記録する。

(3) ホットゾーンへの隊員の進入は、原則として、交替要員が確保できた後に開始する。

6 消防警戒区域等の設定

次の基準により各区域を設定する。

(1) 消防警戒区域及び火災警戒区域の設定

 住民等の安全確保及び現場における消防活動エリアを確保するため、放射線測定器を用いた測定値(空間線量率)がバックグラウンドレベルを超えない区域に速やかに消防警戒区域を設定する。この場合、安全を見込んで十分に広いスペースを確保し、区域を縮小することはあっても拡大することがないように設定する。

 火災の発生するおそれが著しく大きいときには、火災警戒区域を設定し、その区域からの退去命令、区域への出入り制限及び火気の使用を禁止し、住民等の安全を確保する。

(2) ホットゾーンの設定

放射線の測定値(空間線量率)が100μSv/h以上の区域及び関係者等の情報から放射線被ばく(放射能汚染を含む)の危険が高い区域をホットゾーンとして設定し、人命救助等でやむを得ない場合を除き、原則として進入を禁止する。また、放射性物質等の輸送車両については、100μSv/h以上の放射線が検出されない場合においても、輸送容器から半径約15mの区域にホットゾーンを設定する。

(3) ウォームゾーンの設定

 空間線量率がバックグラウンドレベルを超えない安全な場所に、隊員・要救助者及び資機材の汚染検査所及び除染所を設定し、汚染検査所及び除染所を含むエリアをウォームゾーンとする。

 隊員の入退出経路及び傷病者の搬送経路にあっては、状況によりホットゾーンとする。

 災害の状況により、汚染拡大危険を考慮した範囲で設定する。

(4) コールドゾーンの設定

ホットゾーン及びウォームゾーン以外の空間線量率がバックグラウンドレベルを超えない安全な場所に現場指揮本部を設定し、救急隊が二次トリアージ及び救急活動を行うエリアをコールドゾーンとする。

7 要救助者の救出・救護

(1) 要救助者を発見した場合は、被ばく又は汚染危険のある場所から、できるだけ危険の低い場所へ移動及び一時的な避難(ショートピックアップ)を考慮し、被ばくによる障害の軽減を図る。

(2) 救助した要救助者は、ホットゾーン外に搬出し、一次トリアージ担当、汚染検査・除染担当に引き継ぐ。

8 汚染検査及び除染活動

汚染検査及び除染は、ウォームゾーン内に設置した汚染検査所及び除染所において、ホットゾーン内等で活動した消防隊員、関係者、要救助者及び使用した消防装備について、次により行う。

(1) 汚染検査所及び除染所の設置

汚染検査及び除染は、原則として施設内の汚染検査室及び除染設備を活用する。ただし、汚染検査室及び除染設備がない場合又は使用できない場合は、空間線量率がバックグラウンドレベル以下で汚染の拡大を防止できる場所に汚染検査所及び除染所を設置する。

(2) 汚染検査要員及び除染要員の指定

施設内の除染設備等を使用する場合の汚染検査及び除染は、原則として施設関係者に行わせ、その他状況により除染担当の隊を指定し、実施する。

(3) 汚染検査

ホットゾーンからウォームゾーンに移動する際には、一次トリアージを実施し、汚染検査及び除染を実施する優先順位を判断する。なお、医師が到着している場合は、助言に基づくものとする。

 要救助者及び関係者の汚染検査

乾的除染後、汚染検査所において汚染検査を実施する。

 隊員の汚染検査

防護服を離脱した後、体内被ばくを防止しながら呼吸保護具を交換し、汚染検査所において汚染検査を実施する。

 緊急に救急処置が必要と判断される場合の汚染検査

複数の放射線測定器(汚染検査用)を活用し、救急処置と並行して、迅速に汚染検査を実施する。

 資機材等の汚染検査

1箇所に集中管理し、汚染検査を実施する。必要により、監視人を置くとともに、警戒ロープ、標識を掲出し、紛失及び移動等による二次汚染の防止に努める。

(4) 除染

乾的除染後の汚染検査により、汚染が認められた場合は次により除染を行う。

 要救助者、関係者及び隊員の除染

水及び中性洗剤等の除染液を用いて、皮膚等を拭き取りにより除染する。

 緊急に救急処置が必要と判断される場合の除染

除染の実施及び程度は、医師の助言が得られる場合、医師の助言に基づき行うものとし、医師の助言が得られない場合、救急処置と並行し、努めて人員を増強し前アによる除染を迅速に実施する。

 資機材等の除染後に汚染が認められた装備資機材は、事業主又は(公社)日本アイソトープ協会に処理を依頼する。

 その他

(ア) 除染実施後は、医師等の指示があるまで、絶対に喫煙及び飲食はしない。

(イ) 汚染が認められた装備資機材は、除染の結果、再使用できるものは除き、原則として再使用しない。

(5) 医師による医学的な助言

 最上級指揮者は、医師が災害現場に出場している場合、現場指揮本部において、傷病者の救出及び除染の優先度、汚染検査及び除染結果、消防隊員の活動危険、救急処置等に対する医学的な助言を受けて活動する。

 最上級指揮者は、医師に消防隊、関係者等の活動状況を情報提供する。

9 救急活動

(1) 救急活動は傷病者の救命を主眼として傷病者の観察及び必要な救急処置を実施し、速やかに適応医療機関等に搬送する。

(2) 傷病者の搬送にあっては、可能な限り施設関係者とともに搬送する。

(3) 救急隊は、コールドゾーンにおいて活動する。

(4) 内部被ばくの恐れがある傷病者にあっては、嘔吐物等による二次汚染に注意し活動する。

(5) 除染後の汚染検査で測定値に変化がない傷病者にあっては、除染部位の被覆を実施した後、搬送する。

(6) その他、放射性物質等に関する救急活動については、別に定める。

(消防活動の終了)

第7条 部隊の縮小や消防活動の終了判断は、以下の活動が全て完了したことを最上級指揮者が確認した時点とする。

(1) 全ての要救助者の救出及び医療機関への搬送が完了したとき。

(2) 放射性物質等による被害の拡大防止措置が完了したとき。

(3) 活動隊員全員の除染が完了したとき。

(4) 現場に残された放射性物質及び汚染物等の処理について、事業者、関係者及び荷主等との協議が完了したとき。

(安全管理)

第8条 消防隊員の被ばくを防止するため、特に次により放射線の防護を図る。

(1) 外部被ばくの防護原則

 γ・X線及び中性子線は、透過能力が強いため、透過阻止能力の大きなコンクリート壁、コンクリート塀、土壁及び土手等重量のある(密度の高い)遮へい物や関係者が保有する資機材等、現場にある資機材等の活用を図る。また、放射線管理区域内で活動する場合は、急なドアの開放や壁の陰からの飛び出しによる高線量率の放射線被ばくを受けないように行動する。

 被ばく線量は、放射線の強さ(線量率)と被ばく時間により決定されるので、被ばく時間の短縮を図る。

 放射線の強さは、距離の二乗に反比例するので、線源からの距離をとる。また、放射性物質等に接近する場合は急激な接近は避け、放射線測定器を活用して高線量率の放射線被ばくを回避しながら行動する。

(2) 内部被ばくの防護原則

 放射性物質等を含んだ空気、ガス、粉じんを吸わないため、ホットゾーン及びウォームゾーン内では、必ず呼吸保護具を着装する。

 汚染した水、粉じん等が皮膚及び衣服に付着するのを防止するため、ホットゾーンでは、必ず放射能防護服、化学防護服又は陽圧式化学防護服を完全着装する。なお、ウォームゾーン内では簡易型防護服等を着装する。

(3) 指揮者は、ホットゾーン内で消防活動を実施して退出した隊員に身体状況を報告させるなどして、隊員の身体の変調について十分掌握する。

(4) ホットゾーン内での活動中、防護服または放射線測定器に異常等が認められた場合は、速やかにホットゾーン外に退出し、身体上の異常の有無を確認し、指揮者に報告する。

(5) 火災又は火災が発生するおそれのある場合の放射線防護

汚染した煙及び熱気から身体を防護するため、化学防護服等の上に防火服及び空気呼吸器を着装する。

(6) 消防警戒区域内では、努めて呼吸保護具の携行や簡易型防護服等を着用するなどの身体防護措置を行い活動する。

(7) 被ばく等の経験がある隊員は、平素から様式2の「放射線汚染被ばく状況記録表」(以下「状況記録表」という。)により、自己の積算被ばく線量等を把握しておく。

(8) 隊長は、平素から隊員の積算被ばく線量等を掌握し、災害現場においては放射線測定器を活用して第6条第1項第2号に示す被ばく線量限度を超えないよう活動管理する。

2 被ばく時の措置

消防活動により被ばくした場合は、次の措置を行う。

(1) 被ばく線量の把握

 隊長は、各隊員の被ばく線量、被ばく状況について活動終了時に確認する。

 所属長は、様式2「状況記録表」を作成し、被ばくした日から5年間保存する。

(2) 被ばく・汚染時の応急処置

 急激に高線量率の放射線を被ばくしたとき又は放射性物質等による汚染を受けたときは、直ちにホットゾーンから脱出し、汚染検査・除染実施後、対応可能医療機関に搬送する。

 創傷部が汚染された場合は、直ちに活動を中断し、汚染検査・除染実施後、対応可能医療機関に搬送する。創傷程度が重い場合は、緊急に救急処置が必要と判断された場合の汚染検査・除染を実施後、緊急被ばく医療機関に搬送する。

(3) 被ばく線量等の管理

 所属長は、被ばく線量等を、状況記録表により総務部長(総務課人事係経由)に報告する。

 所属長は、状況記録表に被ばく線量等が適正に記載されているか確認するとともに、第6条第1項第2号に示す被ばく線量限度を超えないよう適正に管理する。

 所属長は、人事異動時には、新たに配置された職員の被ばく線量等を状況記録表により確認する。

(応援出動)

第9条 本訓令は、放射性物質等に関する消防活動の充実強化を図るものであるが、火災や爆発等を伴う複合的な災害となることを鑑み、本訓令と他の活動要綱等を組み合わせて総合的に対応し、早期に部隊の増隊要請、他の地方公共団体及びその他の行政機関との間に締結した各協定に基づき実施するものとする。

(その他)

第10条 本訓令に基づき、放射性物質等に関する各種研修や訓練を実施し、各放射性物質等の特性に関する知識及び資機材などの習熟に努め、詳細な活動手順等は総務省消防庁及び大阪府からの通知等を参考とすること。

この訓令は、令和2年10月1日から施行する。

別表

放射性物質等に係る関係機関

機関名

内容

地方独立行政法人りんくう総合医療センター

原子力災害医療協力機関として、除染及び治療等を実施するとともに、24時間体制で必要な支援及び助言を行う役割を担っている。

大阪府熊取オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)

原子力災害発生時において、国、大阪府、関係市町等、原子力事業者、関係指定公共機関等の関係機関が参集し、情報を共有しながら、連携のとれた応急措置(事故の状況把握、住民の安全の確保、被ばく者に対する医療措置、避難住民に対する支援等)を実施するための拠点施設。

社団法人日本アイソトープ協会

アイソトープの利用に関する技術の向上及び普及を図ることを目的として、アイソトープ製品の供給から廃棄処理まで、一貫した体制を通じて活動している。不明放射性物質のトラブル対応等の相談にも応じている。

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泉州南消防組合放射性物質等に係る火災等の消防活動要綱

令和2年9月23日 消防長訓令第15号

(令和2年10月1日施行)